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えー、毎回の如く言い訳から入らせていただきます。
日常生活における様々な艱難辛苦を乗り越えて、
ようやく小説に着手できたのが3日前でした。
まぁ、艱難辛苦って言うか、諸々の誘惑なんだけどね。。
にーっこにこどーがっ(´・ω・)

そういう訳で、久々に書いたら案外調子よくて、すらすら書けました。
文字の数だけで言ったら、歴代最長じゃないですかね?(・ω・*)

前半~中盤のスーパーおっさんタイムや長台詞長会話はノリノリで書けたのに、
最後の4分の1くらいは難産でした(・ω・)
何故か裕花さんの心情の辺りは全く進まず。。どういうことよ?(´∀`;)

まぁ色々あった3日間でしたが、勢いのまま推敲もせず公開します。
後で読んで悶え苦しむとしましょう(´・ω・)それではどぞー


>月ノ宮さん
始球式の前にライブすれば、広島ボロ儲けですにゃ∈(・ω・)∋
まぁ試合見ずに4分の1くらいの客が帰るかもしれないけど(ぇ-
 ビルの屋上は、正確にはその扉が隔てた向こう側は、『あちら側』の世界だった。

 そこで逢坂たちは、怪盗烏丸とその助手虎嶋との戦闘を繰り広げた。結果は、白山は虎嶋の一撃を受け気絶。逢坂は威勢はいいが、全身打撲で立っているのがやっとの状態。犬飼は虎嶋に捕らえられた。完敗である。

「しかし、戦闘パートはもうお終い。駒と盤上は整った。ここからは、詰め将棋だ。圧倒的劣勢の中『仙人』劉はどのような逆転劇を魅せるのか。」
「地の文を自分で言ってて恥ずかしくないですか?ええと、劉くん?」
「50過ぎてからは、恥ずかしいなんて感情欠片もなくなったな」
「お姉さん嘘は嫌いです、君みたいな子供が50過ぎなわけないでしょう」

 真偽はともかくとして、いつになっても恥じらいの心は持っておくべきだと思います。

 劉は策を持って虎嶋に対峙しているようだが、果たしてこの状況、『駒と盤上は整った』と言えるのだろうか。まともに動けるのは劉と店長のみ。対する烏丸たちは無傷な上に人質というカードまで所持している。

「まぁ、犬飼にゃ人質の価値はねぇけどな、嘘でも裕花の嬢ちゃんを盾にした方が効果的だぜ」
「私もそれについては同意します、どうせ何だかんだ理由付けて喰い殺すつもりですから」
「やめとけ、腹壊すぞ」

 虎嶋は押さえ込んでいる犬飼を見ながら思った。どうやら劉と逢坂の発言を思い返すと、この男、結構蔑ろにされているらしい。

「ちょっとは人質に気を遣わない!?」

 犬飼は気絶から覚め、必死に声を出したが、結果は虎嶋に更にきつく首元を締め付けられるだけだった。ぐ、とも、げ、ともつかない呻き声を上げ、犬飼は沈黙した。

「さて、いい感じに和んだところで」

 犬飼は無言ながら視線で抗議をしているが、劉はまるで取り合わない。

「そろそろ逆転劇が始まるぜ、俺は親切で世渡りしてきたタイプだから、お節介だと思うが先に内容のネタバレをしてやろう、長くなるけどよーく聞いておけよ」

 劉仙人の、演説タイムの始まりです。

 まず、お前さんはこの空間にどこから入ってきた?何、民家の屋根裏?よく入れたな。俺たちはビルの屋上の扉からだ。この『扉』ってのがミソな。多分烏丸も別の所から入ってきたんだろうな。ぁん?お前には聞いてねぇよボケが。
 つまりここに至る『扉』は、向こうの世界に複数存在している。勿論入り口は普通の奴等が入らないような場所だがな。
ちなみにそういう風に場所を設定したのは俺だ。ここ重要だからチェックな。
 で、これ思い出して欲しいんだが、白山に俺が何を指示したか憶えてるか?そうだ、『10分粘れ』だな。俺には下準備のために時間が必要だった。
その下準備ってのが、新しい入り口の設定だ。成田家のある部屋に入り口を設定しといた。ビビるだろうな、入ったらこんな可笑しな空間で、しかも不審者と裕花の嬢ちゃんが勢揃いだ。
解るか?お前らここに逃げ込んだつもりで、実はネズミ捕りに掛かりに来てんだよ。詰めが甘かったなぁおい烏丸。まさか俺がこの件に関わってるなんて思わなかったろ?どちら様ですかだと、手前そこで全力土下座して頭打って死ね。上から容赦なく踏みつけてやるから。
と言うわけで、そろそろここを大量の武装したお兄さんたちが占拠するはずだ。まぁ最初に入ってくるのは、富野 実利っつー馬鹿ボンだけどな。知らない?虎嶋の嬢ちゃんはまだ会ってねぇか。烏丸、お前は忘れてるだけだろ。俺のことも忘れやがって。この恩知らずが。そう、そうだ。裕花嬢ちゃんの婚約者な。お前が裕花の嬢ちゃん引っ張ってきた理由はそれだろ?んだよ、照れんなよ、気持ち悪い。
さぁて、そろそろ来るぜ。3、2、1。

 ガチャリ、と扉を開く音。そこから男が一人顔を出した。

 ……

「何じゃこりゃあ!」
「ホラ来た、馬鹿が来た」

 してやったり、と劉が自慢げに胸を張る。これだけ見ると、見た目の年相応らしい可愛らしさがある。しかし、烏丸たちは暢気に見ていられる状況ではない。明らかな危機である。邪魔者は消す。虎嶋は咄嗟に動き出した。捉えていた犬飼を投げ出して、一直線に扉へと駆ける。虎の瞬発力でもって、すぐさまトップスピードに。劉の脇を抜け、実利の喉元へ食って掛かる。

「店長、出番だ」
「了解!」

 店長は予め指示された通り、扉の付近に陣取っていた。飛び掛る虎嶋を、上から押さえ込んだ。うつ伏せに倒したところを反転されたが、反撃の隙を与えることもなく、腕と脚を封じ込むことに成功した。

「離すなよ店長、この機会逃したら、捕まえるのは不可能に近いからな」
「滅茶苦茶力ありますよこの子、爪と脚は抑えたけど、噛み付かれないように気を付けなきゃならないから、一筋縄では行きません」
「まぁ頑張れ、諦めんなよぉ」
「頑張る以外策なしッスか」

 とは言え、虎嶋も虎嶋でこの状況は非常に苦しいものだった。仰向けは力を込めやすい体勢ではないし、噛み付くことができるとは言え、それをさせてくれるとは到底思えない。それに、単純な力比べで言えば、相手に敵わないと感じ取っていた。

「さて、一番の難所は越えたな、おい、そこの固まってる馬鹿ボン」
「…な、何者だお前は、ここは何処だ?何故裕花がここに?」
「一気に質問すんな、とりあえずこういう時には落ち着いてお巡りさんだろ?それか、お前の集めた捜索隊でも呼んで来い」

 千里眼。劉は何でも知っている。当然実利が組織した裕花の捜索隊も『見えて』いた。劉が諭すと、実利は部屋から出て行った。恐らくは数分後にでも、この空間には人が溢れかえるだろう。

「どうよ天下、お前ピンチなんじゃね?」

 劉はあえて烏丸の名を呼ぶ。あわよくば彼が劉を思い出すことを願って。

「まぁ、最悪どうにかなりますよ師匠、ってアレ、師匠?」

 ふいに、『師匠』という言葉が口から漏れた。口に出した本人にも、その意味が理解ができていない。

「烏丸さんは、あの方の事をぼんやりと覚えてるんじゃないですか?もしかしたらあの子は本当に仙人様で、烏丸さんは仙人のお弟子さんなのかも知れませんよ」

 そう言って、裕花は悪戯っぽく笑った。まさか、と烏丸は苦笑しながら返した。この状況は裕花にとっても複雑なはずだったが、相変わらず二人は緊張感に欠けていた。

「ここだ、早く来い!」

 1分もしない内に実利が戻ってきた。それも屈強な男たちをぞろぞろと引き連れて。恐らく彼らが裕花の捜索隊なのだろう。すぐさま入り口付近が男たちに塞がれた。仕事の早い男たちだった。

「実利様、そこで絡まってる男女がいますが、如何なさいましょうか?」

 男の一人が実利に訊ねた。ちなみに、絡まってる男女は店長と虎嶋のことである。本人たちは至って必死だったが、こう言われてしまうと何ともいかがわしい雰囲気に変わってしまう。

「関係なさそうなので放置」

 実利はばっさりと切り捨てた。

「ちょっと、おじさんこの子抑えるのに苦労してるんだよ、君たちも手伝ってよ」
「悪いな、そういう指示がねぇから動けねぇ」
「薄情者…!」

 どうやら店長は、引き続き一人で虎嶋を押さえ込まなければいけないようだ。彼らの目的はあくまで裕花の救出なので、無関係と言えば無関係なのだが、店長は彼らの様子を見る限り、実利の命令以外は受けないように思えた。

 部屋に進入してきた男たちは、慎重に烏丸を取り囲んでいた。構えた銃は烏丸に向けられている。
烏丸は、この様子に多少の不安を感じていた。烏丸自身は、銃を突きつけられる場面に幾度となく出会っている。だから自分なりの対処法や回避する手段を持っている。今回は隣には裕花がいるが、裕花を守るのは、烏丸にとって難しいことではない。言ってしまえば、一人のときと大差はないのだ。
しかし、彼は危機感を抱く。『裕花に銃口を向けている』という事実が、そこにはあったからだ。
仮にも烏丸は裕花を攫った誘拐犯だ。下手に刺激をすれば、裕花を傷付ける可能性だって十分に考えられる。それに、もしも発砲した場合、或いは暴発でもした場合、裕花に流れ弾が当たるとも限らない。
にも拘らず、裕花に銃口を向けている。『もしかしたら、あの男は裕花に向けて引き金を引くかもしれない』。烏丸は直感的にそう思った。

「裕花さん、僕から離れないで下さい」
「…はい、離さないで、下さいね」

 裕花は烏丸の背に隠れ、彼の服の裾を握り締めた。その手が震えているのを、烏丸は感じ取っていた。必ず守らねばと、烏丸は改めて決意した。

「富野 実利さん、あなたと話がしたい」

 烏丸の指名を受け、実利が捜索隊の合間を縫って出てきた。体格のいい捜索隊と比べると、彼の身体は一回り小さく見える。
「交渉でもする気か、私は裕花さえ返してくれれば、それでいいのだが」
「それは難しいですね」
「ならば取引をしようか、成田家の家宝はやれんが、金なら幾らでも用意してやる」
「これだから金持ちは、何でも金で解決すると思っちゃいけないですよ」
「こうしよう、金は出す、それに、お前の犯した窃盗罪及び誘拐未遂の罪も見逃してやろう」
「そんなもの、僕にとって大した価値はない」
「裕花にはそれだけの価値があると言うのか、何を出せば裕花と釣り合う?答えてみろ」
「あのさぁ」

 烏丸の語気が荒くなる。

「さっきから聞いてると、返せだの取引だの価値だの、裕花さんを何だと思ってんの?」
「私の妻になる女だ、お前も知っているだろう」
「じゃぁさ、その『妻になる女』に銃口を向けて平気なわけ?あんた、まともじゃないよ」
「うるさい、私の組織した捜索隊は優秀だ、万一にもそのような事が起こらない様に常に厳しい訓練を課している」
「分かった、もういいよ、僕は裕花さんを連れてここを出る」

 烏丸が足を踏み出すと、捜索隊の男の動くなと一喝した。烏丸は動じる様子もなく、怒声を発した男の方へ向き直る。

「あんな男の下で働いてるなんて、君たちも大変だね、分かってるとは思うけど、あいつは君たちのことを人間だなんて思っちゃいない、成績や肩書きでしか君たちを見てないんだ、きっとね」

 烏丸はそう言って、裕花の肩を抱き、再び歩き出した。捜索隊の男たちは、誰も彼を止めようとしない。もう銃は構えられていなかった。

「どうしたお前たち、あの男を止めないか」
「もうやめだ」

 捜索隊の一人が言った。

「何?」
「実利さん、あんたにゃ付いて行けねぇよ」
「何だと!?」

 当惑しているのは実利だけではない。烏丸を囲う男たちも、彼の方へ向き直った。口々に彼を慮る言葉を呟いている。烏丸は彼らの言葉の断片から、男が捜索隊の隊長であることを知った。

「俺さ、家に嫁さんとガキがいるんだよ、そりゃ嫁さんは昔みてぇに若くもねぇし大体綺麗な女じゃねぇ、付き合ってた頃に比べたら、口は悪くなったわ怒りっぽくなったわで全くロクなもんじゃねぇ、けどな、嫁さんがいつも言うんだよ、『あんたが仕事で死んだら、子供たちには父ちゃんの武勇伝たっぷりと聞かせてやるよ、だから立派にでかい仕事果たしてきな、恥ずかしい真似だけはするんじゃないよ』ってな、俺は今の仕事に胸を張れねぇ、堂々とこれが俺の仕事だなんて言えねぇんだよ、だからこんな仕事もうやめだ」

 嫁さんを大事にしてやれねぇ男なんかと、組んでられっか。
そう吐き捨てて、男は去っていった。後に続くように捜索隊がぞろぞろと出口へと歩いていく。前から実利が気に食わなかった。いい加減うんざりだ。自分は隊長について行きます。だりぃ。さーせん、今日見たいテレビあるんで。各々理由は様々だったが、誰も彼も実利について行く意志を失くしていた。実利は、見放されたのだ。

「あーらら、馬鹿ボン一人になっちまったな」

 傍目で観客を気取っていた劉が、実利を冷やかした。劉さんすごくいい笑顔である。

「くそ、馬鹿はこれだから始末に負えん」

 実利は腰に携えた拳銃を引き抜く。動くな、と声を鋭く発し、烏丸に銃口を向けた。
 烏丸はその様子を冷ややかな目で見ていた。彼の後ろにいる裕花も、哀しげに目を伏せていた。

「さぁ、裕花をこちらへ渡せ」

 やだよ、と烏丸は告げる。交渉の余地など、最早ありはしなかった。烏丸は、実利に対して呆れ果てていた。裕花にしてもそうだ。

「実利さん、私も、貴方とはもう、共に歩んで行けそうに、ありません」

 相手を傷付けぬように、一つ一つ吟味し、言葉を紡ぐ。穏やかだが、明確な拒絶の意思がそこにはあった。

「ならば富野グループと成田グループの関係はどうなる、考え直すんだ、裕花」
「だから、あんたはみんなに愛想尽かされるんだよ」
「黙れ!」

 実利は激昂した。拳銃を両手で構え、引き金に指を掛ける。これ以上刺激すれば、実利は本当に引き金を引くかもしれない。

「引き金を引いたら、覚悟しなよ」

 烏丸は、挑発とも警告とも取れる一言を発した。張り詰めた糸は、切れる。実利は咆哮と共に引き金を引いた。

銃弾は一直線に烏丸へと向かっていた。が、突如軌道が変わり、銃弾が地面へとめり込んだ。烏丸は表情を変えることもなく、その様子を見ていた。そして、溜息を一つ。

「覚悟しろって言ったよね、相手を殺す覚悟を決めたなら、相手に殺されるかもしれないと、覚悟しなきゃいけない」

 烏丸が指を鳴らすと、実利は突然膝から崩れ落ちた。そのままうつ伏せに倒れた実利は、両腕を使って起き上がろうとするが、いくら力を込めても身体が持ち上がらない。

「あんたの周りの重力を弄らせて貰ったよ、下手に力入れると骨折とかするから気を付けて」

 さてと、あんたには、殺される覚悟はあるのかな?

 烏丸の言葉は、既に実利の耳には届いていない。心は砕かれていた。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、と、念仏のように繰り返す。

「烏丸さん…」

 裕花は不安そうな顔つきで烏丸を見つめた。烏丸は裕花を見つめ返し、冗談ですよ、と言って笑った。穏やかな、笑顔だった。

 二人は共に部屋を出て行った。

「ま、作戦はこれで終了だな、店長、もう離していいぞ」

 劉が言いながら向き直ると、店長は既に虎嶋から離れていた。そして虎嶋は、眠り込んでいた。いつの間にか仕事を果たしていた犬飼曰く、猛獣用の麻酔薬を打ち込んだそうだ。

「おうおう、空気キャラが一丁前にいい仕事してやがる」
「全部人任せで美味しいとこだけ掻っ攫う仙人様には敵いませんがね」

 犬飼は大きく溜息をついた。

「さてと、そろそろ行くか、空気キャラその2、出口はビルの屋上に設定しておいたから、お前は幸を背負って帰れ、店長は虎嶋の嬢ちゃんを頼むぜ」

 空気キャラその2こと逢坂です。今回これまで3回しか名前も出ておらず、台詞もありません。まぁ、満身創痍だったので仕方ないですね。
 自分自身のことで精一杯だったが、逢坂は何とか白山を背中に乗せた。白山は小柄で華奢な体格だったが、逢坂はしっかりとした重みを感じていた。そして、逢坂は歩き出す。

「なぁ犬飼」
「僕は手伝わないよ、疲れたからね」
「そうじゃねぇよ」

 何ていうか、まだよく分からないけど、と前置きをして。
人間って不便だな。痛いし、疲れるし、気持ちも乱れる。今も足元がふらふらするし、精神的に疲れた、って感じがする。でも幸は、そういうのと向き合って、俺の下で働いてくれてるんだよな。毎日そこら中走り回って、傷付いて帰ってきたり、変な菓子買って来たり。急に騒いだり怒ったり、意味分からんくらいテンション高かったり。
俺には人間ってものが理解できてなかった。人間になって、ようやくあいつの気持ちが分かってきた気がするんだ。
だから、俺ももう少しは、幸のこと気遣ってやろうと思うよ。

 犬飼は黙って逢坂の決意を聞いた。逢坂はもう大丈夫だ、犬飼はそう確信した。

「しかし、いいんですか劉さん?」
「何が?」

 虎嶋を担いでのっしのっしと歩く店長と、その半分程度の歩幅の劉との会話。店長は歩くペースを緩め、劉はマイペースに歩き続ける。

「結局烏丸君に裕花さん持っていかれて」
「何言ってんだ、ちゃんと嬢ちゃんは奪還できたじゃねぇか」

 店長からすれば、劉の言っていることの方が、何言ってんだである。店長が首を傾げていると、劉は答えを教えてくれた。

「誰も烏丸から奪い返すなんて言ってねぇだろ?少なくとも俺は言ってねぇ」

 過去の台詞見直さなくていいからね。

「悪代官から商人の娘を救い出す、いい話じゃねぇか」
「あー、劉さん時代劇好きですもんね」
「それに」
「それに?」

 気まぐれに、弟子にちょっかいかけてやりたくなったのさ。

 悪童は、そう言って笑った。抉るように、なじるように、嘲るように。恥じらいを隠すように、笑った。笑い声は黒く澄んだ空へと消えた。

……

「……」
「……」
「……」

 烏丸と裕花は、扉から外へ出た。扉の向こうは、お父様の目の前でした。

「えーっと」
「あー、うん」
「あの…」

 何から話せばいいのか。何を話せばいいのか。まず話さなければならないのか。思考がぐるぐると巡り、元の位置へ戻る。

「儂から話していいか」
「ぁ、はい、どうぞ」

 金蔵が口火を切った。口調には明らかに怒気が含まれている。重々しい雰囲気の中、金蔵は続けた。

「君が裕花を攫った張本人かね?」
「えぇ、まぁ」
「はっきり言わんか」
「間違いございません」

 何やら説教モード突入の気配を烏丸は感じ取った。あまりの予想外な展開に、いやぁ、泥棒相手に説教とか肝が据わったお父様だなぁ、などと場の雰囲気にそぐわない思考を働かせていた。現実逃避真っ最中である。

「捜索隊から報告は受けている」

 あー、あのおじさん達は一応報告してたんだ。てっきりあのまま帰ったのかと思ってたよ。顔で真面目に金蔵の話を聞き、頭は別の場所へとバケーション。だってしょうがないじゃない。こんな空気ゆるふわ系の僕には耐えられないよ。

「隊長の男は『実利だけは止めといた方がいい』と余計なことを付け加えて行きよった」
「まぁ、それは確かに」
「挙句の果てに『恋の百戦錬磨の俺に言わせりゃ、あの二人完全にデキてるぜ、俺は実利なんぞよりあいつの方が、裕花さんを幸せにしてやれると思うんですがね』などと、余計なお節介までして行きよった」

いやいやいやいや。

 最後に何て爆弾落としていくんだよおっちゃん。ほら、裕花さんだって滅茶苦茶困ってるじゃないか。顔を真っ赤にして。あぁもう可愛いなぁ。

「どうなんだ、裕花」
「どうなんだって、お父様…」

 裕花は俯いている。しばらくして、裕花は顔を上げた。
瞳は少し涙で滲んでいるようにも見える。しかし、彼女は気丈に父の正面に立った。胸に手を当て、己の語るべき言葉を語る。

私にとって実利さんとの結婚は、富田家との友好関係を結ぶ政略結婚に過ぎません。私には、そして恐らく彼にも、相手に対する愛はありません。
しかし、私は成田家の娘です。成田家が富野家から圧力をかけられていたのは存じております。だから、私が両家を繋ぐことで、この家を守ることができるのであれば、私は喜んでこの身を捧げましょう。

言い終えると、裕花は烏丸の方を振り返った。彼女は何も言わず微笑んだが、烏丸は、ありがとう、ごめんなさい、と、はっきり告げられたような気がした。

目を閉じて娘の言葉を聞いていた金蔵が、頷いて娘を見つめ返す。

「お前の語るべき言葉は、確かに聞いた、だが、儂が聞きたいのはそんな優等生の解答ではない、聞きたいのは、お前の伝えたい本当の気持ちだよ、お前は我慢し過ぎだ、もっと我侭になりなさい」

 裕花はその言葉を聞いて、金蔵の胸へと飛び込んだ。感情を抑えるリミッターは、外れてしまった。涙と嗚咽が溢れ出す。
 泣きじゃくる裕花の頭を撫で、金蔵は優しい眼差しを向けていた。まるで母が我が子を抱くように、裕花が泣き止むまであやし続けた。
 裕花が落ち着いた頃に、金蔵が烏丸に問い掛けた。

「それで、貴様はどうなんだ?世辞も体裁も要らんぞ」

烏丸は一思案して。そうだなぁ、こういう場合怪盗ネタは不謹慎だし、一応オブラートに包んで

「娘さんを僕に下さい」
「貴様本当に直球だな、少しは包み隠さんか」

 金蔵は呆れた様に呟いた。ただ、金蔵の顔を見る限り、まんざらでもなさそうだ。

「裕花には成田家の娘ということで我慢を強いてしまっていた、この子が優しく、そして少々強過ぎたばかりに、いつの間にか儂は裕花に甘えておったのかも知れん、だから烏丸、貴様が裕花を自由にしてやってくれ」

 成田家の娘ではなく、我が子として、金蔵は裕花の幸せを願った。事実上の結婚の許可である。
 それを聞いた裕花は顔を上げた。見詰め合う親と子。無言でも互いの想いは伝わった。そして裕花は烏丸の方へ向き直る。目を合わせられない。彼を見たら、また泣き出してしまいそうで。

「烏丸さん、これからは…」
「これからは?」

 言葉が段々と細くなってしまう。前を向かなきゃ、裕花は己を奮い立たせる。
 烏丸はその様子を見守る。裕花は必ず向き合ってくれると信じている。共に過ごした時間は僅かだが、烏丸は裕花の強さを知っている。その強さに、惹かれたのだから。

「これからは、ずっと一緒です」

 満ち足りた笑みに、涙一筋。
 烏丸は、感情のままに彼女を抱き締めた。

僕は、どうしようもなく彼女を愛してしまったみたいです。
Secret

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