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何とか間に合ったね!
これが生存報告代わりでいいよね、うん。

刀語はまにわにのデザインが好きです。
特に喰鮫さんと白鷺さんが好きです。
でもまにわに中出演時間最短の二人です(・ω・)

>勝敗さん
最近コメントくれるの勝敗さんくらいだぜ(´・ω・)アリガトス
とりあえずご健在のようでよかったです。
パンヤ楽しそうッスね(・ω・*)
通称『妖怪ビル』の面々は、それぞれの目的を果たすために『裕花奪還作戦』を遂行するための舞台へと向かっている。唯一目的地を知っている劉は、一言も情報を伝えることなく、無言で先頭を歩く。逢坂・白山・犬飼・店長の4人は、黙ってそれについていく。夜の静けさも相まって、コンクリートの階段を上る度に、コツコツと音を響かせていた。そして、劉は階段を上りきると、目の前に見える扉を開いた。吹き込んでくる強風が、劉の髪を逆立てた。

「着いたぞ」

と、劉は素っ気なく告げた。その言葉を受けて、他の4人は首を傾げた。

「劉さん、本当にここなんですか?だって…」
「私らのビルの屋上じゃん」

 烏丸と虎嶋を待ち伏せするポイントが、まさかこれ程近くにあったとは、白山も逢坂も予想だにしなかった。

「劉爺、さっきのはヒントになってないんじゃない?」
「うるせぇ、その内ヒントの意味を教えてやるよ」
「劉ちゃんヒント出すの下手―」
「うるせぇッ言ってんだろうが!文句言う前に手前の貧困な頭をどうにかしやがれ」

 ヒントは確かに意味不明なものだった。しかし、逢坂はもう一度ヒントについて考えてみる。

(『どこにでもあって、どこにもない』か。屋上はどこにでもあるが、このビルの屋上にしかないものでもあるのか?)

「逢坂くらいか、まともに考えてる奴は」
「でもお手上げですよ劉さん、俺には何が何だかさっぱりだ」
「お前の考えは、まず前提から間違ってんだ、ここは本当にビルの屋上なのか、確かめてみな」
「確かめなくても、そうに決まって…」

 そこで逢坂の言葉は遮られた。

 周りを見渡しても、街の明かりは見えない。逢坂は屋上の縁へと向かおうとしたが、どこまで行っても床があるばかりで果てが見えない。

「一体どうなって…」
「ざっくり説明すると、さっきのドアの向こう側には、俺達のビルの屋上が確かに存在している、が、実際にさっきのドアと繋がっている空間は『ここ』なんだよ、そういう入り口が『あっちの世界』にはいくつもある」
「そんな非常識な」

 逢坂は劉の言ってることを理解できても、納得できない。自分自身も例外的な存在である逢坂だったが、この現象には疑問を感じずにはいられなかった。

 一方、白山は劉の言葉を聞いても意味を理解することができなかった。頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいる。

「劉ちゃん、もうちょっと分かりやすく説明してよ」
「どこでもドア」
「なるほど」

 白山は即座に納得した。世の中は、深く考えない人間に優しいのかもしれない。

「つまりな、『どこにでも入り口はあって、あっちの世界のどこにもない空間』、それがここの正体だ」

 劉がさらっと付け加えた。それに反応したのは犬飼だ。

「『圧縮』以外の扉もあったんだね、初めて知ったよ」
「ま、アレは割と初期のものだな、こういうのもアリだろ?犬飼博士」

 劉はそう言って、にやりと嫌な笑みを浮かべた。どうやらまた犬飼の過去を突いて遊んでいるようだ。

 ふいに、ドアノブの回る音がした。軋むような音と共に、ドアが開いて行く。その先には、パーカーのフードを目深に被り、ゴーグルをかけている特徴的な恰好の女がいた。虎嶋美弥である。

 逢坂達はすぐさま相手の方へ向き直し、距離を取った。彼女の身体能力については全員既に把握していた。

「ぇ、あれ、烏丸さんは?それに、この人達…あっ」

 虎嶋はしばし混乱していたようだが、急に逢坂たちへ向かって突進してきた。狙いは当然

「犬飼…犬飼悠馬ッ!」

 虎嶋の突撃に対して劉は指示を出す。

「行けッ、幸!」
「マジスカッ!」
「君に決めた!」
「勝手に決めんなあぁぁ!」

 言葉とは裏腹に、白山は機敏な反応を見せる。素早く虎嶋の前に立ち塞がり、ソバットを叩き込んだ。虎嶋はそれを両腕でブロックし、体勢を立て直すために飛び退った。

「あなた、一体何者ですか」
「白山幸、探偵助手やってます」
「あなたも助手ですか、こんな場所で出会わなければいいお友達になれたのに、非常に残念です」

 両者は会話をしながらも、臨戦態勢を保っていた。湿度の高い重苦しい空気が辺りを包み、二人の間にある緊迫感を一層強くしている。まさに一触即発の状況。どちらかが動き出せば、それが開戦の合図だ。

「どうですか助手のお仕事は?大変じゃないですか?」
「玲ちゃんは、あぁ、玲ちゃんっていうのは上司なんですけど、人遣い荒いですよー」
「うちの上司も中々変わった人で、それにお給料は歩合給ですからねー、中々お給料が安定しなくて」
「私は毎日貰えますよ、今日は何と500円も貰えました」

 虎嶋が沈黙してしまった。いや、どちらかと言えば、固まってしまったと表現した方が正しい。我に返って虎嶋は声を絞り出した。

「ぁ、失礼しました、驚きの安…いえ、何でもありません」
「安いってどういうこと?!玲ちゃん、説明ヲ求ム!」
「こっち見んな、相手に集中しろ幸!」

白山が視線を逢坂へ向けたとき、その隙を突いて虎嶋が先手を仕掛けた。先程と同じ様に突進。しかし今度は、始めから白山を標的にしている。虎嶋は爪を立て白山に飛び掛る。反応が遅れた白山は体を後ろに反らして回避する。白山の鼻先を刃物のような爪が掠めていった。一瞬でも回避が遅れていれば、身体の一部が抉られていたに違いない。

「ちょ、危ない危ない!爪伸ばしすぎだよ美弥っち!」
「かわすのがお上手ですねユッキー、でもいずれ捕まえますよ」

虎嶋はすぐさま反転し、波状攻撃に移行する。白山を目掛けて腕を振り抜くだけの単調な攻撃だが、その全てが例外なく一撃必殺である。白山は回避行動に専念せざるを得ない。

「幸、偉大な劉先生からお前にアドバイスくれてやる」

 白山の耳に、高みの見物をしている劉の声が届いた。

「劉ちゃんマジ最高、教えてくりゃれ」

 天啓と言わんばかりに白山は食い付いた。これまで劉のアドバイスには幾度となく助けられてきた。『今回も知った風な口で、打開策を授けてくれることだろう』そう信じている。

「その1、捕まったら終わりだと思え、その2、つーか触れられたら終わりだと思え、その3、勝とうと思うな、その4、勝てると思うな」
「どうせいっちゅうねん!」

 思わず使ったこともない関西弁で突っ込んだ。相当テンパッているようだ。勝ち目のない相手に、どうやって対峙すればいいのだろうか。

「その5、あと10分逃げ切れ」
「…!?了解!」

 白山は隙を見つけて虎嶋から大きく距離を取った。腰に手を当て、仁王立ちで虎嶋を指差し、そして、宣戦布告。

「美弥っち、鬼ごっこだよ」
「随分鬼に有利なゲームですね、受けて立ちましょう」

 白山は覚悟を決めた。10分間の死闘が、始まる。

……

「さてと」

 劉が神妙な面持ちで口を開いた。白山と虎嶋の様子を固唾を呑んで見守っていた逢坂・犬飼・店長の3名は、劉の方に顔を向けた。

「俺らは4人で烏丸をボコるとするか」
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「劉さん、まだ烏丸は来てないじゃない」
「何言ってんだ店長、奴はもうここに到着してるぜ、鍵括弧が4人分あるじゃねぇか」
「誤植じゃなかったのか!」
「という訳で、そこにいるのが俺らの宿敵烏丸クンだ、存分にボコれ」

 劉の指差した方向には、裕花を抱えた逢坂がいた。正確に言えば、逢坂の姿をした烏丸が、そこにいた。

「あ、どうも、初めましてとお久しぶり」

 烏丸は惚けた様子で挨拶をしたが、その顔は少し引き攣っているように見えた。店長と犬飼は、烏丸の変装について事前に聞いてはいたものの、いざ目の前にしてみると、その精巧な真似様に驚きを隠せず、逢坂と烏丸を交互に見直すしかできなかった。

「失礼だけど、どっちが逢坂さんなのかな?」
「店長、それは普通に、裕花さんらしき女性を抱えてるほうが、烏丸だと思いますよ」
「いや、そう思わせておいて実は俺が本物の逢坂だ」
「割って入ってくんな烏丸、ややこしくしてんじゃねぇよ!」
「声まで逢坂君そっくりなのか?!」
「おい烏丸、逢坂の声で恥ずかしい台詞を一丁頼む」
「探偵王に、俺はなる!」
「烏丸ぁ!そして劉さんも、これ以上場を掻き乱さないで下さい!」

 逢坂の受難は続きそうだった。しかし、そこへ救いの手が差し伸べられた。

「烏丸さん、悪ふざけが過ぎますよ、本物の逢坂さんが困ってるじゃありませんか」

 声の主は、烏丸に抱えられていた裕花だった。裕花は烏丸に下ろしてもらい、言葉を続けた。

「逢坂さんと…お友達の方でしょうか?この度はご迷惑をお掛けして誠に申し訳ありませんでした、騒動の原因は全て私にありますから、どうか烏丸さんを責めないで下さい」

 裕花は深々と頭を下げた。

「待って下さい裕花さん、あなたは何も悪くない」

 烏丸は異を唱えた。

「そうだぜ嬢ちゃん、こいつが全て悪い」
「俺は烏丸をぶん殴れればそれでいい」
「そうとも、善良な僕達は犯罪者を許さない」
「誘拐犯には鉄拳を!お客様には最高のサービスを!」
「全員で喋るなよ!収拾つかなくなるじゃないか」

 烏丸へ一斉に口撃を加える面々。ちなみに、発言は順に、劉、逢坂、犬飼、店長、烏丸である。大所帯での会話のせいで、言葉が無秩序に飛び交っている。

「だったら、収拾付けようか、お前を全員で袋叩きにして万事解決だ」
「ふふん、本物逢坂君、君に僕が捕まえられるかな?じゃないや、捕まえてごらんなさぁい」
「お前もう喋るな」

 売り文句に買い文句。ようやく開戦である。烏丸は素早く裕花を抱え上げると、ふわりと浮き上がった。

「おぉ、本当に空を飛べるんだね、劉さん、アレはどういう仕組みなんです?」
「まぁ、それは見てりゃ分かる、店長は俺と一緒に、出番が来るまで高みの見物してればいい」
「そうですか、それじゃ追いかけっこは若いモンに任せるとしましょう」

 店長は床に腰を下ろし、視線を烏丸の方へ向けた。

 逢坂と犬飼は、空へ舞い上がる烏丸をすぐさま追いかけたが、烏丸は既に二人の跳躍では届かない高さまで来ていた。

「逢坂君」
「犬飼」

 二人は顔を見合わせ、頷き合った。お互い言葉を交わさずとも、目を見るだけで通じ合う。普段は仲がいいとは言えないが、やはり二人の間には強固な絆が結ばれているのだろう。

「行くぞ犬飼」
「了解!」

 二人は同時に跳躍。一人分の跳躍では届かないが、一人が土台となりもう一人が二度目の跳躍を行えば、烏丸の高さに届く。

 しかし、ここで一つ大きな問題があった。

「犬飼、お前が土台だろ!」
「逢坂君が土台じゃないの?!」

 二人に譲り合いの精神はなかった。二人は空中で激突。そのまま地面に叩きつけられた。

「どう考えても俺が上だろうが、この馬鹿犬」
「いやいや、逢坂君は性格的に土台の方が合ってるに決ってる」
「性格ってどういうことだコラ」
「…僕が言うのもアレだけど、君たちもう少し真面目にやりなよ」

 逢坂が見上げると、烏丸は先程の位置から二人を見下ろしていた。

「今度こそ捕まえてやるよ、犬飼を土台にしてな」
「いや、僕が逢坂君の上に乗る、これは決定事項だ」
「まぁ、決まらないなら決まらないで、僕としては助かるけど、何か拍子抜けだなぁ」
「そう言いながら、結構楽しそうですね、烏丸さん」

 裕花が烏丸の胸の中で笑っている。すっかりこのポジションが定着してしまっている裕花だった。それだけ二人の仲は深まっていた。絆って、重要なのは時間じゃないんだぜ。

「裕花さんと過ごす時間なら、いつだってハッピーですとも」
「私もです、いつまでも烏丸さんと一緒にいられたらいいのに」
「えっ」
「冗談ですよ」
「冗談ですか…」

 烏丸は少々落胆した。まぁ、誘拐犯だもんなぁ、と自分自身を慰めた。

「余所見してていいのか烏丸」

 烏丸は、真後ろからの声を聞いた。真後ろ。つまり、相手は烏丸と同じ高さにいるということになる。烏丸は振り返ると、そこには拳を振りかぶった逢坂がいた。最終的には犬飼が踏み付けられるという結論に達したようだ。

「地に堕ちろ烏丸、落ちて死ね殴られて死ねいずれにせよ死ね」

 荒ぶる逢坂を目の前にして、烏丸は至って冷静だった。

「怖いなぁ逢坂君、笑えばもっといい顔になるのに」

 烏丸の言葉になど耳を貸さず、逢坂は拳を打ち下ろす。が、その攻撃は烏丸に届くことはなかった。逢坂が目測を誤ったわけではない。烏丸が避けたわけでもない。逢坂の拳は烏丸の目の前をゆっくりと通り過ぎ、その動きにつられる様に、逢坂の身体も宙へと投げ出された。

「?!」
「無重力体験にご参加頂き、誠にありがとうございます、なんてね」

制動が利かず宙を舞う逢坂だったが、急に浮遊感から解放され、地面に落ちた。この様子を見物していた店長は、もう一度先程の質問を劉に投げかけた。

「アレはどういう仕組みなんですか?劉さん」
「まぁ、一言で済ませるなら、重力制御だな、ここにいる奴らの中では、俺を除いて一番現実離れした能力の持ち主だよ」
「重力を自由に扱える訳ですか、そりゃ便利そうだ」
「あいつは馬鹿だから、悪戯程度にしか使えねぇけどな」

 地面に仰向けに倒れた逢坂は、そのまま上を見上げる。視線の先には自分自身の姿。苛立ちは収まらず、心の内で更に熱く滾っていた。

「逢坂君、大丈夫かい?さっきから何度も頭打ってるけど」
「うるさい」

 犬飼の心配にも耳を貸さず、逢坂はふらふらと立ち上がった。体のあちらこちらに擦り傷を作り、服もぼろぼろになっている。

(人間化するタイミングが悪かった。感情が未成熟なのもまずいけど、何より痛みを把握しきれていない。加減を知らずに暴走を続けたら、身体を壊しかねない。何か逢坂君を止める方法はないのか)

「他人の心配とは、随分と余裕ですね」

 犬飼は背後からの声を聞いた。しまった、と思ったときには既に遅かった。首に腕を回され、完全に動きを封じられてしまった。喉に腕を押し付けられ、苦しくなりながらも、犬飼は声を絞り出す。

「白山君と、戦ってたんじゃないのか?」
「先ほど私が勝利しました、今度はユッキーが鬼ですが、あれを見る限りでは、鬼ができるような状態ではなさそうですね」

 そう言って、虎嶋は体の向きを変えた。必然犬飼の体もそちらを向くことになる。犬飼の目に映ったのは、仰向けに倒れる白山の姿だった。

「白山君!」
「安心してください、ちゃんと生きてます、恐らくただの脳震盪でしょう」
「そうか、無事でよかった」
「さて、安心したところで、あなたには一度眠って頂きます」

 虎嶋はそう言って、犬飼を更に強く締め上げた。その数秒後、犬飼の意識は途切れた。

 気絶した犬飼を引きずって、虎嶋は逢坂に近付く。

「逢坂さん」
「あ、何だよ虎嶋、俺は忙しい…って、それ犬飼か?」
「あなた方の仲間である犬飼悠馬は、私が預かりました、彼の命が惜しければ、このまま私たちを見逃してください」

 犬飼を盾に、逃走ルートの確保を図る。無論虎嶋は犬飼を生きて返そうなどとは微塵も考えていないが、理屈は通っているはずなので交渉の材料として機能するはずだ。

だが

「何だそんなことか」
「何だとは失礼ですね、こんな人でも仲間でしょう?」
「そいつに人質としての価値はねぇ」

 言い切った。

「人でなし!?」
「どうしてもと言うなら、裕花さんをくれ、そしたら犬飼を引き取ってやってもいい」
「そっちの丸儲けじゃないですか!」
「こっちは犬飼引き取るって損害被ってるじゃねぇか、世の中ギブ&テイクが基本だろ?」
「え、今私そんなおかしいこと言った?」

 産業廃棄物は、業者さんにお金を払って回収して貰うらしい。つまりまぁ、そんな感じ。

 その様子を遠くで見ていた劉と店長だったが、ようやく動き出すこととなる。

「さて、そろそろ出番だぜ店長」
「あ、仕事あったんですね、てっきり見てるだけだとばかり」
「それならここに呼んでねぇよ、明日も仕事あるんだろ?」

 やはり劉はどこか店長に優しい。さて、ここで劉の口から初めて作戦が明かされるわけだが…

「ほとんど劉さんの独壇場ですね、これまでの3人の頑張りは何だったのか」
「まぁ、準備ができるまでの時間稼ぎだな、道化もいい所だぜ」

 劉はさらりと言い切って、虎嶋の元へ歩き出した。

「さて嬢ちゃん、真打登場だぜ」
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