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えー、皆様バレンタインデーおめでとうございます。
チョコないしそれに準ずるものを頂いた、あるいは
贈与した方がほとんどだと思いますが、そうでない方は
この駄文をプレゼントだと思っていただけ…るわけないよねぇ。


大体なので一概には言えませんが、
A-sideは逢坂さんルート、B-sideは白山さんルートと
思っていただければよいと思います。内容的にはA-sideが
犬飼さんルートっぽいけど、まぁ気にしないで下さい。
相変わらず誤表現や分かりにくい文章があるでしょうから、
何かあったら突っ込んでいただければ幸いです。
 時刻は午後六時半。逢坂は成田家に向け快調なペースで走り続けていた。三十分程前には成田家の屋敷が見え始めたのだが、目に見える屋敷は大きくなるばかりで、一向に到着する気配はない。

「どんだけ大きな屋敷なんだよ」

逢坂は独り言を呟いた。淡々と着実に、時々愚痴を溢しながらも、逢坂は一時間半休むことなく走り続けていた。
しかし、逢坂には気がかりなことがあった。一つは白山のことだ。電車を間違えずに乗ることができたか、乗換えを正確に行えているか、寄り道していないか、車に轢かれていないか、心配の種は尽きない。だがそれ以上に心配なことがある。

(杞憂ならいいが…)

逢坂は大通りの角を折れ、人通りの少ない路地へと入って行き、複雑な構造の路地を考えなしに走り回った。そして足を止めた。間違いない、逢坂は自身が尾行されていることを確信した。

「出てこいよ」

 その言葉に反応するように、一つの影が逢坂の前に飛び出した。隠れても無駄、隠れる意味などないと考えたのだろうか。影の主は、事務所に現われた配達員だった。黒猫マークの帽子と制服もそっくりそのまま、見間違えることもない。
配達員は気さくに声を掛ける。明らかに怪しい登場の仕方だ、白々しいことこの上ない。

「おや、奇遇ですね、またお会いできて光栄です」
「そんなアグレッシブな奇遇は聞いた事ねぇよ」
「先ほどお送りした箱の中身は御覧になりましたか?割れ物だったのでちょっと心配だったんですよ」
「確かに派手に割れたな、お蔭様で部屋が一瞬だけ煌びやかになりまして、非常にいい迷惑でしたよ馬鹿野郎」
「それはよかった」
「よくねぇよ」

 逢坂は明らかに敵意を向けている。警戒心の表れである。

「ところで、これからどちらへ向かわれるのですか?随分遠くまで走って向かわれるようで」
「知ってて聞くなよ、盗人」

 逢坂の頭の中では、配達員=怪盗の図式が成り立っていた。怪しすぎる配達員が、変人の怪盗と結びつくのは半ば当然とも言えた。

「盗人とは心外な、僕は善良な怪盗だよ」

 本人が認めたのだから間違いない。

「善良だろうと盗みは悪だ」
「そんなにツンツンしなくてもいいのに、今時流行らないよ?」
「むしろ今一部で大流行らしいぞ」

 軽口を叩いてはいるものの、二人はすでに臨戦態勢だ。正体が分かっているとはいえ、得体の知れない相手に気は抜けないし、迂闊に手を出すことはできない。
が、そんな状況で配達員はあっさり均衡を破った。ずかずかと逢坂の間合いへと入り込む。あまりの大胆さに逢坂は一瞬戸惑ったが、迷いを払い相手の頭部を狙ったハイキックを繰り出した。

「!?」

 逢坂の脚は配達員の顔の横でピタリと止まった。意図的に止めたわけではない、目に見えない何かが、逢坂の脚を止めたのだ。予想外の事態から身の危険を感じ取った逢坂は、反射的に後方へと飛び退いた。

「蹴りと反応、どちらも申し分ないね、逢坂君の教育の賜物かな?」
「……?」
「あぁ、そんなに警戒しなくていいよ、さっきの技は攻撃向きじゃないし、何より君に危害を加えるつもりはない、僕の狙いは逢坂君ただ一人さ」
(何を言ってるんだこいつは…)

 先ほどから言動と事実が噛み合っていない。逢坂はどういうことか分からず、頭が少し混乱していた。逢坂は混乱を打ち消すため、疑問を一つ投げかけた。

「お前は『逢坂』の何なんだ?」
「よくぞ聞いてくれた!逢坂君と僕は、互いに互いを認め合い、愛の絆で結ばれたライバルなのだよ!」
(気持ち悪い…)

 逢坂は露骨に嫌悪の表情を見せていた。やはりこんな変態は知り合いにいない。これまで出会った奇人変人共が霞んでしまうほど、突き抜けた変態だった。

「思えば苦節三年、いや四年…五年だったかな?一時は逢坂君を追うことを諦めて、真面目に就職しようとも思ったこともあったよ、『黒猫撫子の宅急便で』働いたり、『マスタードーナツ』でバイトしたり、あとは二十歳の未亡人って設定の美人女家庭教師!あれは面白かったなぁ、でもあの時の男子高校生には悪ことしたかな?喜んでもらってた手前、正体は男でした、なんて言えないもんね」

 指を鳴らすと、配達員の姿から、女家庭教師(らしい)へと姿を変えた。驚くべきことに、服装や髪型はおろか、声色まで艶やかな女声へと変化させている。逢坂には背を向けているため、顔は分からないが、恐らく変装の技術は相当なものなのだろう。でなければ性別を偽ることなどできるはずがない。

「幸い怪人二十面相よろしく変装はお手の物だったから、色んな仕事ができて退屈はしなかったよ、でもね、やっぱり生活に張りがないというか刺激が足りないというか、何か物足りなかったんだよねぇ」

 逢坂は背を向けて一人喋り続ける男(女教師に変装中)を警戒しながらも、別の事を考えていた。一つ分かったこと、怪盗スカイ・ウォーカーは男である。あくまで本人の言葉が正しければ、という仮定の上での話だが。そして分からないこと、見えない何かの正体と彼の素性である。

「でも意外と忘れた頃にそういうのって見つかるんだよね、今回の場合も本当にそう、まさかタウンページに『逢坂探偵事務所』が載ってるとは思わなかったよ、これは間違いなく逢坂君だと確信して、アポなしで飛び込んで行ったんだけど、流石にちょっとテンション上がりすぎて先走っちゃったかな?でもこういうのって勢いが大事じゃない?自分で書いた手紙を相手に渡すって、ラブレターみたいで勇気がいるから、ノリでやっちゃった方がきっといい結果につながると思うんだよね、ただ、しまったなぁって思ったのは…」

まず考えねばならないのは、この場をどのように切り抜けるか。選択肢は二つ、逃げるか戦うかだ。しかし、逃げるという選択肢は逢坂は切り捨てた。理由は二つ、成功率が低いことと、選択を先延ばしにするメリットがないからだ。
幸い今相手は逢坂に背を向け、自分の世界に入り込み好き勝手喋っている。戦うという選択肢、チャンスは今しかないのではないだろうか。後頭部に一発叩き込んで吊るし上げてしまえば全て解決、仮に動きを気取られたとしても、振り返るまでのタイムラグを考慮すればこちらが有利、不都合になることはないと判断してもよいだろう。
思考終了、あとは行動を起こすのみ。脚部の動作確認を行い、作戦の成功に万全を期す。そして、決行。
相手との距離はおよそ三メートル、音を立てず助走、身体を沈めてつま先に力を溜め、跳躍。

「逢坂君の姿が発見できなかったことだよね、これは計画性を欠いた僕のミスなんだけど、逢坂君も待ち構えてくれるのが礼儀だと僕は思うんだよね、そもそも…」

男はまだ気付いていない。勝った、と逢坂は思った。狙いは後頭部、重力落下と体重を乗せた一撃で…
自らの勝利を確信し、拳を振り下ろそうとした刹那、逢坂の視界が揺れた。地面に叩き落されたことにようやく気付く。一体何が起こったのだろうか。逢坂は視線を男に向けたが、男は未だに向こうを向いて何かを喋っている、喋っていることは分かる、音も耳に入ってくるのだが内容が頭に入ってこない。身体から精神が乖離し、思考力が薄れて行く感覚。視界は次第に黒が支配して…
シャットダウン。逢坂の機能は停止した。

……

「もう少し優しく気絶させることはできなかったのかい?美弥君」
「すみません烏丸(からすま)さん、手近にあったものが狸の信楽焼きしかなかったものですから、つい」
「むしろ狸の信楽焼きが手近にあったこの町に驚きだよ、とにかく、鈍器選びはもうちょっと慎重に、分かったね?」
「以後気をつけまーす」

 声の主は、先ほどペットショップで買い物をしていた虎嶋 美弥(とらしま みや)と、怪盗スカイ・ウォーカー改め烏丸 天下(からすま てんげ)だ。
二人の側には気絶した逢坂が横たわっているが、気にする様子もなく安穏と会話を続けている。何気に壮絶な絵だ。彼らは世間体を気にしないのだろうか。近隣の住人にでも見つかれば、通報されかねない状況である。

「それで、この人はどうします?置きっぱなしだと不味いんじゃないですか?」
「そうだねぇ、とりあえず服を剥ごうか」
「ごめんなさい烏丸さん、私には意味が分からないです」

 烏丸と付き合いの長い虎嶋で分からないのだから、本人以外には理解できないだろう。

「あぁごめん、分かりにくかったね、僕は『偶然』そこで寝転がってる、逢坂君の助手(と思われる)ワトソン君(仮)の服と姿を借りて、逢坂君に会いに行くつもりなんだ」

 実はこの時、烏丸は二つのミスをしていた。一つは、逢坂の素性や性格を把握しきれていないこと。これでは逢坂に変装しても、親しい人間には違和感を与えてしまう可能性がある。
そしてもう一つ。烏丸が探す逢坂は別の人間だった。
つまり、人違いである。
どうやら烏丸は、逢坂のことを別の逢坂さんの助手か何かと勘違いをしているようだ。ちなみに、本人がその勘違いに気付くのは、もう少し先である。

「そういうことじゃなくて、どうやって隠蔽するのか…」
「放っておけばいいんじゃない?それか、虎嶋君がこの人の面倒を見てあげるかい?」

 虎嶋は良心と仕事を天秤にかけた。うーん、と頭を捻って一思案。虎嶋の表情が明るくなった。名案を思いついたようだ。

「お給料貰えるなら面倒見ます!」

 良心+お金>仕事

「だったらお願いしようかな、給料は仕事が成功したら、ちゃんと払うよ」
「分け前は三割ですからね」
「はいはい」

 そうこう言っている内に、烏丸は逢坂への変装を終えた。服を剥ぎ取られた逢坂はというと、烏丸がそれまで着ていた女教師の服を、虎嶋によって着せられていた。

「意外とこういう服似合いますねー」

 どのような姿になったのかは、想像にお任せします。

「さぁ、僕もワトソン君も着替えが済んだことだし、そろそろ出発しようか」
「そのスーツ似合ってますよ、烏丸さん」
「烏丸じゃない、僕の名前は…何だっけ?あと一人称も聞いてないや」

 烏丸はすっかり逢坂の役になりきっていたが、名前を聞いていないことにようやく気付いた。

「聞くの忘れてましたね、その調子じゃ、変装なんか無理じゃないですか?」
「キャラ付けは僕の勘だけど、多分合ってると思うな、クールな毒舌系」
「大まかに言えばそんな感じでしょうけど」
「ま、あとはフィーリングで何とかするよ、それじゃ行ってきます」
「行ってらっしゃい」

 逢坂に扮した烏丸は、屋敷へと向かった。そして午後七時頃、白山と合流することとなる。穴だらけの作戦は、果たして成功するのか。


……


ほぼ同時刻、犬飼は逢坂の捜索をしていた。

「劉爺もちょっとは自分で動けばいいのに、ってこれも聞かれてるかな」

劉の目が気になって迂闊に愚痴も言えない。目に見えぬ監視カメラは強力に機能していた。
 犬飼は劉から貰ったメモをもう一度見る。酷い悪筆で、説明もアバウトだった。本人でなければ小学生が鉛筆で落書きをしたようにしか見えない有様だった。

「役に立つとは思えないな」

 犬飼はポケットにメモをしまった。恐らく二度と見ることはないだろう。

「さて、ヒントもなしにどうやって探そうか」

 犬飼が逡巡していると、携帯電話が鳴り出した。が、音はすぐに止まった。所謂ワン切りである。犬飼が発信者を確認したら、案の定発信者は劉だった。
 恐らく電話代を浮かせるための手段だろう。偉そうにしている割にはセコい爺さんである。犬飼は劉に電話をかけた。

「おう、俺だ」
「劉爺、電話代くらい自分で持とうよ」
「俺は別にお前に話すことはねぇけど、お前は俺の話が聞けねぇと困るわけだ、つまりお前が電話を必要としてるんだから、電話代はお前が持て」

 身勝手な理論を堂々と展開した。どうやら劉は犬飼が逡巡しているのを察知して電話したようだ。さすが千里眼を名乗っているだけのことはある。ただ、元々の原因は劉のメモが雑なためなのだが、そんなことは勿論お構いなしである。

「はいはい、それで逢坂君は今どこにいるんだい?」
「まずは左向け、そこから見える細い道に入れ、曲がるときはその都度指示する」
「分かった、任せるよ」
「おい悠馬」
「何?」
「今お前『カーナビみたいな爺さんだな』って思っただろ」
「…それくらい聞き流してくれよ」

 ともあれ、劉のナビは優秀で、犬飼は迷うことなく順調に進んでいった。

「さぁて、そろそろ近くに来てると思うんだが…おっと、そこ右だ」
「了解」

 犬飼は支持通り右折する。

「あ」
「あ」

 犬飼と虎嶋、感動の再会である。

「あーそうそう、言い忘れてたけど、さっき言ってた嬢ちゃんも近くにいr」

 犬飼は携帯電話の電源ボタンを押し、強制的に話を打ち切った。

(劉爺め、何が『近いうちに会うことになりそうだ』だ。明らかに意図的じゃないか)

 苦い顔をしている犬飼を余所に、虎嶋は無邪気な声で挨拶をする。

「こんばんはー、また会うなんて奇遇ですね」

 犬飼も慌てて笑顔を取り繕い、挨拶を返そうとするが、ある違和感に気付く。

「虎嶋さん、その背中に背負ってるのは…?」
「落とし者ですよ、これから交番に届けに行くところです」

 虎嶋が背負っていたのは、頭部から血を流す逢坂だった。
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