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大体(ここ重要)月1ペースで公開して行こうかなと考えてはいますが、
そのペースで書ききれるか不安です(´・ω・)
ここ二週間で千文字も書けてないんだぜ。

あと、私も一通りは目を通しているのですが、誤字脱字文章がおかしい等、
気付いたことがあればコメントしてくれるとありがたいです。その都度直すよ!
部屋全体が閃光に包まれてから数秒が経った。

(…生きてる?)

白山は顔を覆っていた手を少しずつ離していく。怖々と、指の隙間から辺りを覗くと、そこには逢坂の無事な姿があった。
ただ、先程と違う点もある。逢坂の頭やスーツには、キラキラとした紙片や、色とりどりのリボンがかかっていた。パーティーなどで使われるクラッカーの洗礼を受けたといった様相だ。白山も違和感を感じ頭を振ると、それらがはらはらと床に落ちた。
どうやら手の込んだ悪戯だったようだ。白山は安堵し、逢坂を見る。が、逢坂の身体は小刻みに震えていた。様子がおかしい、不安に思い、白山は逢坂の顔を覗き込む。

「玲ちゃん、無事でよかったね…玲ちゃん?」

返事はないが、その様子からは怒りの感情が読み取れた。ただし、その対象は配達員の幼稚な悪戯そのものではない。その結果として部屋が散らかされたことに、逢坂は激怒していた。髪は妖しく揺らめき、瞳孔は開ききっている。逢坂の背中からは、目に見えぬ魔人が生え、睨みを利かせているかのようだ。押し潰す、圧殺する、プレッシャーとはこのことだ。下手に刺激すれば爆ぜてしまいそうな、そんな張り詰めた空気が辺りを支配していた。
白山は、この後どのような展開になるか、読めていた。逢坂とは長い付き合いではあるし、何よりその潔癖症からくるヒステリーを、被害者である白山はよく知っていた。
長年の経験と野性の勘が、早くここから逃げろと叫んでいる。慎重かつ大胆に、確実かつ迅速に、抜き足差し足忍び足、出口まで、あと数歩と迫る。
ふいに、頬を伝う一筋の汗がポタリと床に落ちた。常人には知覚出来ないほど、微小な音ではある。しかし、感覚の研ぎ澄まされた白山には、それが致命的なミスであるかのように錯覚してしまう。

(気付かれた…?)

心拍数は急上昇、どくん、どくん、と脈を打つ。否応なく逢坂の方を振り返ってしまう。大丈夫、逢坂は背を向けたままだ。安堵、もう大丈夫だと心の声が囁いた、うるさい、気が散る。一瞬の油断が命取りだ。最後まで気を抜かず、震える手でドアノブを掴む…

「幸」
「ひゃいっ」

 白山の背筋に電気が走った。首筋に鋭利な刃物をあてられたような感覚に、ピンと姿勢が伸びる、完全な直立不動だ。仮に扉の向こうから誰かが訪れたら、白山は脊髄反射で敬礼をしていただろう。
そんな怯えきった白山の表情を、逢坂は見る。それほど怖がらせてしまったか、少々反省し、ばつが悪そうに表情を崩した。

「悪かったな、怖がらなくていい」

困ったように笑う、不器用な笑みだった。

「片付けてくれるか?」
「…らじゃー」

所長とその部下、逢坂は絶対的に優位な立場だ。そのため白山は渋々でも従うしかないのだが、命令ではなくお願いされるというのは、別段悪い気はしない。さてやるか、と壁際に立て掛けてある掃除機を取りに行こうとすると…

「何だろこれ、手紙かな?」

白山が見つけたのは、時限爆弾だと思われていた箱から、顔を覗かせている封筒だった。白山はそれを逢坂に手渡す。

「…予告状?」

 封筒の中身はやはり手紙であった。内容は予告状。殺人事件などの、事後的な依頼が中心の逢坂探偵事務所にとって、『謎』や『非現実的』なものを扱うとはいっても、あまり馴染みのない言葉だった。
面倒なことになりそうだ、と逢坂は顔をしかめたが、こうなってしまっては仕方ない。手紙を読むだけ読んで判断しようと文書に目を落とした。

   予告状
                怪盗 スカイ・ウォーカー
「作文かよ!」

 二行目にして早くも突っ込みが入った。横書きでは分かりにくいと思うが、原稿用紙で文章を書くときは、一行目は三文字開けてタイトルを書き、二行目の下の方に名前を書くのが一般的な書き方なのだ。
いきなりのボケに対して、ついつい柄にもなく反応してしまった。しかし本来突っ込むべきポイントは『怪盗』というキーワードであろう。怪盗がどのような意図を持って、この予告状を送りつけてきたのか、逢坂はそれを知ることが先決だと仕切りなおして、とにかく続きを読むことにした。

『久しぶりだね逢坂君、元気にしてたかな?君が他の国へ行くと言って出て行ってから、もう三年も経ってしまったね。
僕はもう寂しくて寂しくて、夜も眠れず食事も喉を通らない、仕事の怪盗も手に付かなくなってしまったから、必死で君を探したよ。まぁ無駄骨だったわけだけど(笑)
何だよ、ここにいるならすぐに連絡してくれればいいのに、相変わらず友達甲斐のない奴だな君は。
ともかくだよ、君とまた出会うことができて僕はとても幸いだ。これで晴れてまた怪盗事業を再開することができそうだよ。君がいないと怪盗も張り合いってものがないからね。
ルパン三世に銭形警部、怪人二十面相に明智小五郎、怪盗キッドにコナン君、トムにジェリー、最後のはちょっと違うかな?つまり優秀な怪盗には優秀なライバルが必要であり、逆にライバルのいない怪盗なんて、ただの金銀財宝の乱獲者さ。
でもようやく君に巡り会えた、もう我慢の日々はお終いさ。思う存分僕は盗みを働くよ。

では早速記念すべき復帰第一回目の予告だ。
明日零時零分、とある名家の豪邸で美しい花を一輪頂きに参上する、時間までに準備しといてね。
今日は丁度その家の娘さんの結婚披露パーティーだから、美味しいものが沢山食べられるかもね。パーティーの招待状は同封しておいたから、好きにするといいよ。それじゃまた会おう。

追伸、君とまた熱い一夜を過ごせるのを、楽しみにしているよ。』

「……」
「……」
「「気持ち悪ッ!」」
「ぇ、何?玲ちゃん、この気持ち悪い人知り合い?」
「こんな変態が知り合いにいて堪るか、人違いだ人違い」

 仮に知り合いだったとしても、記憶を闇に葬るか、本人を葬るかしているだろう。逢坂からしてみれば、ストーカーからの突然のラブコールでしかない。こういう場合無視を決め込むか、警察に通報するかだが、二人は警察のことをよく知らないため、結局は泣き寝入りということになりそうだ。まぁ、泣きはしないのだが。
逢坂は胸のつかえをとるように、大きく息を吐き出した。思い出すのは、あの配達員の顔。

(何が「こちら、取り扱いには十分ご注意ください」だ。明らかにお前の仕業じゃねぇか)

 帽子で顔を隠していたのもその為で、あの笑顔も作り物で、去り際に意味深な言葉まで残したのは、彼の遊び心だったのだろう。逢坂は今更ながらに自らの不甲斐無さに唇を噛んだ。
そんな逢坂を尻目に、白山はがさごそと先ほどの封筒をまさぐっている。指先に当たる感触、封筒の中にある2枚の紙を引き出した。

「ぁ、招待状発見!本当に入ってるよ」

 白山は招待状を指で摘んでヒラヒラとさせ、はしゃいでいる。
実際は、世間では知らぬ者がいない程有名な両家の結婚披露パーティーの招待状で、決してぞんざいに扱っていいような代物ではない。そんなものがタダで転がり込んでくるなど、普通では考えられない幸運であったのだが、世情に疎い二人にとっては、数十万円の価値がある招待状も、ただの紙切れだった。
しかし、逢坂はふと思い出す。名家の娘の結婚披露パーティー、豪華な食事が沢山。あわよくば豪華ディナーにありつけるのではないだろうか。
「なぁ幸、それ開始時間は何時からだ?」
「んー、七時からだね」
「そうか、ならすぐに準備しないとな」
「コレに行くの?」

白山は目を丸くして首を傾げたが、逢坂から豪華な夕食が食べられると聞かされると俄然やる気になり、散らかった部屋を大急ぎで片付けた。やればできる子白山幸。裏を返せば、やらないからできない子でもあるわけだが、そう言ってへそを曲げられると困るので、逢坂は口を噤んだ。代わりに、部屋の片付けが一段落した頃、逢坂は白山に労いの言葉を掛けてやる。

「ご苦労さん、そろそろ出るからシャワー浴びて着替えてきな」
「はーい」

 部下を巧く扱うコツは、適切な報酬とやる気にさせる餌と言葉だ。特に白山に対しては効果が大きい。素直というか純粋というか、人を疑うということを知らない。疑うことができないというから困りものだ。
ただまぁ、頭が悪いだけなのかもしれないと思うと、逢坂の心情も複雑だった。
そんな益体のないことを考えている内に、白山はシャワーを終え、バスタオルを巻いて戻ってきた。もしも事務所に客が来ていたら、今頃大惨事となっていたが、本人はまるでお構いなしといった風だった。彼女の入浴時間は非常に短く、特に冬場は入浴時間は十分にも満たない。水浴びは嫌い、と本人は言うが、もしかしたらシャワーからお湯が出ることを、逢坂は教えていないのかもしれない。節約家逢坂、ただし、節約を知らぬ間に実行しているのは白山だが。

「そんな格好で出てくるなと何度も言っているだろ、客が来てたらどうするつもりだ」
「お客さんなんて来ないじゃない」

蹴られた。逢坂のすらりと長い足が鞭のようにしなり、白山の後頭部を打ちつける。
部下を巧く扱うコツは、客の前で粗相をせぬよう、普段から躾を怠らないことだ。

「痛ー」
「ほら、馬鹿やってないで早くこれに着替えろ」

逢坂は服を手渡す。白山がそれを受け取り、別室に移動してから少し経つと、事務所の扉からノックの音が聞こえてきた。客だろうか。現在時刻は五時半過ぎ、少々客が来るには遅い時間だが、果たしておよそ一ヶ月ぶりの仕事は得られるのだろうか。逢坂は期待を込めて扉を開けた。

「やぁ」

 扉の向こうの男は、気さくな声で挨拶し、右手を上げた。
男の名前は犬飼悠馬(いぬかい ゆうま)、一階にあるペットショップの店員だ。線の細い体つきと野暮ったい眼鏡のせいで、少々頼りない印象を受けるが、話してみると快活で、動物の知識も豊富ということで、老若男女問わず人気のある店員だった。

「…何の用だよ」

 対して逢坂は不満な態度を露にしている。残念ながら客ではなく、知り合いだ。逢坂にとって、記憶を闇に葬るか、本人を葬るかしたいタイプの知り合い。

「嫌だなぁ逢坂君、友達に会うのに理由なんか必要ないだろ?」
「お前なんか友達じゃねぇよ」
「相変わらず友達甲斐のない奴だな君は、そんなだから一向に友達ができないんじゃないのかい?」

 犬飼はそう言って、嗜虐的に笑う。普段は体操のお兄さん並の爽やかさで振舞っているが、逢坂の前では大体こんな感じだ。いじめっ子系眼鏡男子、犬飼。

「余計なお世話だ」

 余計なお世話だったが、事実でもある。
ただ、周りに集まる奇人変人と、友人として付き合うのは相当根気の要ることなので、逢坂の関わりたくないという気持ちも、分からないではない。

「ところで逢坂君、今日は白山君は居ないのかい?」
「あぁ、幸なら奥の部屋で着替えてるよ」
「そうか」

ふむふむ、とあごに手を掛け二回うなずくと、犬飼は幸のいる別室へと歩を進める。逢坂はその様子を見ると、すかさず犬飼の後頭部に蹴りを叩き込んだ。

「当たり前のように覗きに行ってんじゃねぇよ」
「覗きではなく対面だよ、この国の言語は複雑なんだ、正しく使えるようにならないと後々苦労するよ?」
「お前もこの国の常識を学ばないと、いい加減ぼろが出るぞ」

 実はこの二人と白山は、同郷の出である。ただし、逢坂と犬飼の二人は、その頃から親交があったわけではなく、こちらに移ってくるまでに一度しか会ったことはなかったりする。
そのただ一度きりが、逢坂の見た本当の彼の姿で、この国で見せてはならない彼の素顔だった。
この国に来て早三年、彼らは世間知らずな面があるにしても、この国の生活には段々と馴染んでは来ていた。せっかく見つけた新たな居場所を失うわけにはいかない、と逢坂は思う。大切なものは失くしてから気付くことを、逢坂は学んでいたからだ。

「僕も同じような気持ちだよ、ただ、僕の場合はこの国での生活も、こういうキャラの僕も、悪くないからこのままでいいかな、って思い始めたからだけどね」
「今、さらっと俺の考えてること、読み取ったよな?」
「動物の気持ちは、何となく分かるんだよ」
「俺は動物じゃない」
「人間もほとんど動物みたいなものだろ、違うかい?」

 逢坂は戸惑う。人外、人形。自分で考えすぎだということが分かっていても、それが負い目となっている。

(俺は…人間になれたのだろうか)
「まぁ、考えすぎないことだね、そういうのは時間が解決してくれるものだから」
 そう言って、犬飼は逢坂の肩を軽く叩いた。逢坂はまた考えを読まれたことに文句を言おうとしたが、無駄だと分かっていたので、その言葉を飲み込んだ。

「それじゃ、僕はこれで」

 と、犬飼が出て行こうとするところに、白山が準備を終えて戻ってきた。黒のロングドレスを身に纏い、普段の姿からは想像がつかない優雅な雰囲気を放っている。

「やぁ幸ちゃん、今日はお洒落な服を着ているね」
「ぁ、悠馬さんこんばんは、今日はこれからパーティーに御飯を食べに行くんだってさ」

 別に食事の為だけにパーティーに行くわけではないが、白山にとってはその程度の解釈なのだろう。ドレスの裾を指で摘み、少々歩きにくそうに二人の方へとやってくる。一応パーティーということで、逢坂は白山にドレスを渡したのだが、どうやら本人は不満なようで頬を膨らませていた。そういう子供っぽい仕草にこの恰好は合っていないが、白山の長く艶やかな髪と、スレンダーな肢体はこのドレスに相応しいとも言えた。ただ、足りない所があるとすれば

「胸か」
「にゃんとっ!」

 真実を告げるということは、得てして残酷なものである。まだ若いから成長するはず、そんなふうに考えていた時期が、白山にもありました。
気を取り直しての、白山と犬飼の歓談は続く。尽きない話題、しかし

「そろそろ出発しないと間に合わないな」

逢坂は時計を見て呟いた。時刻は既に六時を過ぎている。別に遅れたところで問題はないのだが、逢坂にとって遅刻はあまり好ましいものではない。きっちり間に合わなければ気が済まないのだ。

「そうか、なら僕は失礼するよ、用事は済んだからね」
「用事?」

逢坂は聞き返したが、犬飼は背を向けて、手を振り去って行った。二人は犬飼を見送ると、戸締りと火の元の確認を行った。準備は万全、あとはもう出発するばかりという所で、白山が逢坂を止めた。しきりに鼻をひくつかせ、逢坂の周りを嗅ぎ回る。そして一言。

「他の女の匂いがする」
「お前は彼女か」
「いや、違うけど、知らない匂いが玲ちゃんからするもんだから」

大体、今日逢坂が接触したのは白山と犬飼、あとは配達員の男しかいない。となると、考えられるのは

「スカイ・ウォーカーは女、なのか?」

配達員の男に扮して、逢坂に近付いた。十分考えられる仮説ではある。だからと言って、どうということはないのだが、やはり相手の情報は少しでも多い方がいい。逢坂はそのことを一応頭隅に留めておくことにした。

「そんな事より出発だ、時間がない、走るぞ」
「えー」

パーティー会場までの距離はおよそ二十キロメートル、果たして間に合うかどうか。因みに、現在のフルマラソン世界記録は、二時間三分五十九秒。

「二十キロも走れないよ、玲ちゃんみたいに無尽蔵の体力って訳にはいかないんだから」
「なら仕方ない、カード貸すから電車使え、使い方は分かるよな?」
「馬鹿にすんなぁ!」

流石の白山も、電車の使い方は数ヶ月前に憶えた。乗車券は未だに買えないが。
とにかく行き方は決定だ。逢坂探偵事務所一同は、慈善事業と個人的な恨みを孕んだ怪盗退治へと向かう。
Secret

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